1.令和3年度(第43回)森喜作賞受賞者第一部門 「しいたけ等きのこ類の調査・研究及び普及」
【選考理由】 佐藤利次氏は、シイタケに関する遺伝子工学的な研究手法を先駆的に開発するとともに、逆遺伝学的なアプローチにより、子実体の保存過程で生じる「ひだ」の褐変と自己溶解のメカニズムを分子レベルでの解明等に取り組みました。また、リグニン分解酵素については、環境浄化等の産業利用や木質バイオマス変換への応用が期待される知見を集積しました。これら酵素化学・分子生物学的な解析は、優良品種育成に応用展開していく上で重要な基礎的知見を提供しました。 遺伝子工学的な手法に関しては、世界で初めてREMI法による効率的な形質転換法の確立と、シイタケ由来の新規薬剤耐性マーカーを開発しました。また、シイタケの分子育種や機能未知の遺伝子を解析する上で不可欠な技術開発を進展させるなど、新品種の育成分野においても重要な知見が明らかにされ、今後のさらなる研究の進展が期待されます。 なお、保存中の褐変については、特に「ひだ」でメラニン生合成に関与する2種類の酵素が強く関与していること、一方、自己溶解については、多糖類分解に関与する2種類の酵素遺伝子が活発になることを突き止め、この酵素を単離し、自己溶解との関連性を明らかにしました。 第二部門 「しいたけ等きのこ類の栽培の優良経営」
【選考理由】 岡田重徳氏は、50年間にわたり乾シイタケ栽培に従事し、高品質な上冬魔フ生産技術の開発等を通じて、収量や単価の向上による経営安定化に努め、また、大分シイタケの生産振興と活性化に多大な貢献を果たしました。 栽培面においては、湿度の確保と急激な温度変化を防ぐ目的で、林内ほだ場の中にビニールハウスを設置し、適合品種の絞り込みとともに、ほだ木水分や生育中の温度・湿度条件の検討、さらに乾燥工程における初期温度や昇温の設定等に改善や工夫を重ね、傘に亀裂が入らない高品質の上冬魔生産する技術の開発を実現しました。さらに、発生の分散による労働力の平準化、ビニールハウスと人工ほだ場を使い分けた天白冬魔ニ茶花冬魔フ生産による平均単価の向上を目指すなど、栽培技術上の種々の工夫がみられます。こうした地道な努力の積み重ねが、全国乾椎茸品評会における農林水産大臣賞6回、林野庁長官賞11回の受賞に結びついているといえます。 なお、岡田氏のシイタケ生産にかける熱意とともに、栽培技術上の改善や工夫等は、生産者相互の交流、情報交換、研修等を通じて地域全体の技術向上にも連動している。また、地域の椎茸生産組合連絡協議会の会長として、幅広い消費拡大行事や普及・啓蒙活動にも取り組み、日本一の産地である大分のシイタケ振興の牽引役としての大きな貢献がみられる。こうした功績は、大分県功労者表彰(農林水産)、黄綬褒章〔業務精励(農林業)〕の受賞、森の名手・名人(公益社団法人国土緑化推進機構)としての選定にもつながっており、今後のさらなるご活躍が期待されます。 |
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